国籍によって美容治療の好みが異なる?

2020年2月にカンボジアで起業し、美容スキンクリニックを開業しました。開業した直後からコロナ禍が始まったにもかかわらず、徐々に多くの患者さまに受診していただけるようになりました。

当クリニックは日系ですが、プノンペン市内には多くの外国人が住んでいるため、受診してくださる患者さまの国籍は多岐にわたります。

患者さまの国籍内訳は、時期によって異なりますが、4割がカンボジア人、2割が日本人、残り4割をフィリピン人・マレーシア人・アメリカ人・フランス人・中国人・シンガポール人など十数ヶ国の患者さまが受診されています。

日々の診療で興味深かったのが、患者さまの主訴(受診目的)・肌の悩みが年齢・性別のみならず、国籍別でも特徴があった点です。

 

① カンボジア人の傾向

受診する年齢層が20代が多いということもあり、ニキビやニキビ跡の相談をされることが多いです。また、受診する男性の比率が高いのも特徴です。そして男女を問わず「美白」を希望されているため、グルタチオンの入った美白点滴や水光注射・IPL(フォトフェイシャル)などを好む傾向にあります。また、日本製のスキンケア商品に強い関心を示す方が多いです。

当クリニックはカンボジア唯一の日系美容クリニックであるため、医療クォリティーを信頼して受診していただいている印象です。

 

② 日本人の傾向

主に20~50代の各年齢層の女性が受診されます。アンチエイジングを目的に、日本で行ったことがある治療を継続される方が多いようです。カンボジアの強い日差しと乾燥で、肌にダメージを受けてしまうことを気にされています。あと、口コミでしょうか、脱毛を希望する男性も増えています。

当クリニックは、日本人の好みに合う治療メニューを構成しているため、馴染みやすいのかもしれません。また日本の美容クリニックと比較しても、治療価格を大幅に抑えていることが好評で、定期的に幅広い施術をお受けになる方も多いです。

 

③ 中国人・中華系の傾向

当クリニックは中国語で宣伝・広告を出していませんが、最近は口コミでの患者さまが増加しています。中には、プノンペンから200㎞近く離れた町から友達・家族連れで来られることも珍しくありません。

特徴として、多くの患者さまは最初から既に治療内容を決めており、美容点滴や水光注射では特定の有名ブランドを指定することが多いです。特に医薬品の品質管理・安全性を重視されているため、当クリニックをお選びになっていると聞いております。

 

④ アセアン系(フィリピン・マレーシア・タイ)の傾向

当クリニックの国籍別患者数ではフィリピン人が第3位です。男女問わず、本当に美容が大好きな方が多いです。そのため、当クリニックでは非常勤でフィリピン人看護師を採用しているくらいです。

アセアン諸国出身の患者さまは普段なら自国に戻った際に美容治療を受けていたそうですが、このコロナ禍では出入国が難しく、たまたま当クリニック開業のタイミングで受診を始めた方が多いようです。特徴はリピート率の高さです。また、「美白・美肌」効果がある施術を何でも体験しようとする好奇心の強さも印象的です。

当クリニックの広告・プロモーションはSNS上に英語のみで発信していますが、アセアン諸国出身の患者さまは皆、情報のキャッチがとても速いです。

 

⑤ 欧米系の傾向

北米・ヨーロッパ・オセアニア出身の患者さまの多くは、肌のたるみ・シワを気にされており、ボトックス注射・ヒアルロン酸注射などの治療を好まれます。その次に脂肪溶解注射・糸リフトに興味を示されます。一方で、シミの治療や美容点滴には関心が薄い印象です。

多くの方はカンボジアにある他の美容クリニックの治療レベル・安全性に不安を感じていて、日本人専門医のいる当クリニックをお選びになっているとのことです。シェムリアップなどの遠方からお越しになる方もいらっしゃいます。口コミなんでしょうか、ボトックス注射のみを希望して何人もの患者さまが連続して受診され、一気にボトックスの在庫がなくなってしまったこともありました。ただ一般的には、治療方法の選択には慎重な方が多く、十分に説明を聞いてから判断される傾向にあります。

 

以上、当クリニックを受診していただいた患者さまの治療の好み・傾向を書いてみました。

プノンペンではCOVID-19陽性者の急増のため、2021年4月1日に夜間外出禁止令が発令され、夜8時から朝5時までの外出が厳しく制限されました。もちろん患者さまにとって美容治療どころではありません。さらに4月中旬から3週間のロックダウンがあり、当クリニックも一時閉鎖を行いました。2021年10月1日現在はカンボジア政府による制限は大幅に緩和されていますが、当クリニックは予約枠を制限して診療を継続しています。しばらくご不便をお掛けするかと思いますが、すべての患者さまの安心・安全を考慮して、満足していただける美容治療を提供したいと考えております。

カンボジアの医療環境:日系クリニックと日本人医師

増加する海外の在留邦人

2020年2月頃からのCOVID-19のパンデミックにより、海外渡航が難しい世の中になってきました。そのため、渡航の予定変更を余儀なくされた人も多いのではないでしょうか。私の住むカンボジアでも、在留外国人の一時帰国が増え、カンボジアへの入国者数も激減しているようです。

ただ今回の特殊な状況を除くと、海外移住・長期滞在する日本人は毎年増加しており、今後も増加していくことが予想されます。また、芸能人が日本を離れて海外移住したというニュースも最近は珍しくないような気がします。

外務省のデータ(2019年)によると、海外在留邦人(日本人)の総数は約141万人とのことで、地域別では北米が在留邦人全体の約37%(51万8755人)を占め、次いでアジアが約29%(41万4380人)、西ヨーロッパが約16%(22万3049人)という順になっています。

また、国別では私が住んでいるカンボジアの在留邦人は4,216人登録されており、国別順位は29位です。隣国のタイには79,123人(国別順位4位)、ベトナムには23,148人(同14位)の日本人が住んでいることを考えると、カンボジアに住む日本人はかなり少ないと言えます。確かにASEAN諸国の中でカンボジアの経済規模は小さいですが、外国人フレンドリーな環境でもありますから、今後の伸びしろは大きいのではないかと感じています。

 

海外生活で気になるのは治安と健康?

やはり海外に住んでいて気になるのは治安と健康かもしれません。もしも海外で病気やケガをした時は、日本とは医療制度や医療水準も異なるため、どこの国に住んでいるかによって状況は異なります。医療先進国だと安心ではありますが、それでも語学力にかなりの自信がないと医師や看護師との会話に困ってしまいます。

そこで、多くの海外旅行傷害保険には日本語ヘルプデスクや通訳サービスがあるわけですが、診察室で医師と患者の具体的なやり取りまで通訳してくれるとは限りません。そのため、滞在している国に完全に慣れるまでは、不安や不便との隣り合わせになってしまいそうです。このような時、もし日本人医師や看護師が現地にいれば、在住日本人の安心感と利便性はもっと向上するはずです。

 

意外と多い?カンボジアで働く外国人医師

世界の多くの国では、外国人医師や外資系の医療機関の参入は厳しく規制されています。日本も同じく、外国人医師が日本国内で医療行為を行うには、日本の医師国家試験(日本語版または英語版)に合格し、厳格な審査を受ける必要があります。

しかし、カンボジアの場合、海外の医師免許を保有している外国人医師にはカンボジアの医師国家試験は課されず、必要な資格書類を提出し審査を通過することで、カンボジア国内での医療行為が認められます。歯科医師や看護師も同様です。

もちろんカンボジア政府もいい加減な医師を排除するために厳格な審査を行っているので、ご安心ください。実際、私がカンボジアで医療行為許可証(医師免許)を取得する際には、多くの必要書類を提出し、審査に時間を要しました。具体的には、パスポート・VISA・日本の大学医学部卒業証明書・成績証明書・医師免許証・専門医証書・行政処分関係英文証明書・無犯罪証明書などの原本および英語版を提出しました(今はもう少し煩雑になっているようです)。私が聞くところ、カンボジアには日本以外に、中国・韓国・台湾・タイ・フィリピン・ベトナム・アメリカ・フランスなど出身の医師がいるようです(ボランティアで医療活動を行っている医師を除く)。

最近はカンボジアでも正式な医師免許を持たないニセ医者や闇医者が問題になっているようなので、外国人医師の審査は甘くはないです。母国で何らかのトラブルを起こした経歴のある医師には、カンボジアでの医療行為は許可されません。

 

やっぱり安心。日本人医師のいる病院・クリニック

現在、カンボジアの首都プノンペンには、日本人医師が働いている病院・クリニックがいくつかあります。日系では、「ケンクリニック」「サンインターナショナルクリニック」「サンライズジャパン病院」「オリエンタルジャパンスキンクリニック」、外資系では「ラッフルズメディカル」などが挙げられます。市内にいくつかある日系の歯科クリニックにも複数の日本人歯科医が勤務しています。日本人在住者の数から考えると、充実している方ではないでしょうか。

カンボジアに住む外国人はあまりローカルのクリニックには行きたがらないので、外国人医師がいるクリニックや病院には一定の需要があります。さらに、カンボジア人の富裕層も外資系の医療機関を好んで受診する傾向にあるようです。

例えば、日系の美容クリニックである「オリエンタルジャパンスキンクリニック」の患者層ですが、カンボジア人4割・日本人2割・残り4割はフィリピン人・シンガポール人・中国人・アメリカ人・フランス人・オーストラリア人といったように多様な国籍となっています。一方、同じく日系の「サンインターナショナルクリニック」では、6-7割を日本人患者が占め、残りをカンボジア人・中国人などの患者で占められるそうです。

 

カンボジアでの美容クリニック選び 5つのポイント

カンボジアの首都プノンペンでは、他の東南アジアの都市と同様に美容クリニック・エステサロン・スキンスパなどが次々とオープンしています。SNSでの画像投稿が日常生活の一部となった今、写真にどう映るかが重要視されているからかもしれません。

カンボジアに住んでいると、どこでどんなクリニック(美容皮膚科・美容外科)を受診したらいいのか迷うのではないでしょうか。これには日本での病院・医者選びとは異なった視点が必要です。やはり安心・安全が最優先されますから、カンボジア在住医師の立場からクリニック選びのポイント5つを解説していきたいと思います。

 

① 本当に医療施設なのかどうか

② 医師の経歴が明確かどうか

③ 治療内容・必要性を十分に説明してくれるか

④ 複数言語で対応してくれるか

⑤ 派手な広告やプロモーションを連発していないか

 

① 本当に医療施設なのかどうか

これを読むと、一瞬「はぁ?」と思うのではないでしょうか。

「〇〇クリニック」という看板を見ると、普通は医師と看護師がいる医療施設だと思うはずです。しかし、カンボジアでの“Beauty clinic”や“Skin clinic”は、カウンセラーに相談できる場所というようなイメージもあるため、単なるエステサロンやスキンスパがクリニックを名乗っている場合があります。同じく、“Beauty center”も医療施設ではない場合があります。美容医療を受けるつもりで受診しても、資格を持たないスタッフが施術を対応することになりますから、ご注意ください。

さらに、医療施設でないにもかかわらず、患者に注射や投薬までしてしまうサロンも存在します。もちろんカンボジアでも違法ですが、どこからか薬剤を入手して無資格のスタッフにより自己流の治療が行われることも珍しくありません。万が一のトラブルが起こった場合の対処法を持っているわけではないので、リスクしかないと思われます。

 

② 医師の経歴が明確かどうか

カンボジアの美容クリニックには、外国人医師が治療を行う外資系クリニックも数多く存在します。しかし、それらの外国人医師は非常勤であることが多く、治療が終わるとすぐに帰国してしまい、フォローアップが必要な時に相談できないケースもあります。またカンボジア人医師が常駐していても、十分な臨床経験がない場合もあります。カンボジアでは、美容外科・皮膚科・形成外科などの専門医資格を持っていない医師が多く、数日間から数週間の美容セミナーや研修に参加しただけでも、経験者として扱われる傾向にあるくらいです。やはり、そのクリニックの医師がどのような経歴・属性を持っているかの確認は必要かと思います。

 

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